「家族葬 10.45万円〜(税込)」。
テレビCMのこの表示に、消費者庁が9月18日、措置命令を出しました。
問われたのは、値引き幅ではなかった
命令書の認定はこうなっています。
あたかも、本件役務が、最低料金として10万4500円で提供されるかのように表示していたこと。
実際には、本件役務の提供を受けるには、僅かな場合を除き、30万8000円以上の費用が必要であったこと。
この2つが並んだだけで、景品表示法第5条第2号の有利誤認になりました。
注目したいのは、この認定に出てこないもののほうです。値引き幅がいくらだったか。比較対照にした価格が適正だったか。どちらも出てきません。
出てくるのは、10万4500円という金額で実際に提供していたかどうか、その一点だけです。
「僅かな場合を除き」という書き方
原文の「僅かな場合を除き」は、実務で読むときに効いてきます。
ゼロではなかった、ということです。10万4500円で提供された例もあったが、それは僅かだった。それでも不当表示と認定されました。
つまり、「その価格でやったことが一度もある」は反論になりません。 問われているのは、その価格が最低料金として機能していたかどうかです。
注記では消えない
「別途費用がかかります」「プランにより異なります」と小さく添える作りをよく見ます。
ただ、注記が効くのは、表示そのものが認められる範囲に収まっている場合だけです。下限価格そのものが実態と離れていれば、注記を足しても離れたままになります。景品表示法の打消し表示について、消費者庁が同じ結論を出しています(「満足度93%」は、化粧品では原則禁止、医療機関では罰則の側にあります)。
制作会社に任せても、発注側は表示の主体から外れない
この命令には、制作の実務に直接かかわる一文が入っています。
表示内容の決定について広告制作等を行う事業者に委ねることにより、当該表示内容の決定に関与している
金宝堂がテレビCMの表示内容を制作会社に委ねていたことを認めたうえで、それでも表示内容の決定に関与している、と認定しました。
外注は責任の移転ではありません。 制作会社に任せた結果できた表示でも、名宛人になるのは広告主です。逆に言えば、制作を請ける側にとっては、発注元にこの一文を示せるかどうかで話が変わります。「うちは言われたとおりに作っただけ」では、発注元が守られません。
同じ型は、どこにでもある
葬儀業の事案ですが、構造だけ取り出すと、扱っている業種のほとんどに当てはまります。
- 美容医療の「全身脱毛◯◯円〜」
- 整骨院・サロンの「初回◯◯円〜」
- ECの「定期初回◯◯円〜」
どれも、最低価格を入口に置いて、実際の成約はそれより上の価格帯、という設計になっていることがあります。設計自体が違法なのではありません。その最低価格で実際に提供しているなら適法です。
分かれ目は、掲げた金額に顧客が実際に到達できるかどうかだけです。
確かめ方は1つしかない
自社の「◯◯円〜」について、その価格での成約が直近で何件あるか。
数えられるなら問題ありません。数えたことがないなら、そこが一番危ない表示だと考えています。景品表示法第7条第2項では、資料の提出を求められてからの期限は15日です。集計に1か月かかる体制では間に合いません。
行政が「その価格では提供していない」と証明するのではなく、事業者が「提供している」と示せるかどうかで決まります。
この記事を書いた人
Pharma-Ad Lab|医療広告・薬機法コンサルタント まさ(薬剤師)
薬剤師/薬機法管理者/景表法 第1級/YMAA・KTAA認証/コスメ薬機法管理者
健康食品・化粧品・クリニックの広告を、薬機法・景品表示法・医療広告ガイドラインの観点で審査しています。NGを指摘して終わりにせず、訴求力を保ったままの言い換えまでセットで出すのが基本方針です。