「疲労感を軽減する機能」を、広告で「疲労を軽減」と書く。
この一語で、届出表示の外に出ます。
消費者庁が原文で書いていること
特定保健用食品に関する質疑応答集の問52は、「広告において許可表示の一部のみを表示することはできるのか」という問いに、こう答えています。
許可表示として許可された文言は、原則として一体として表示すべきであり、広告において許可表示の一部のみを表示することは、表示内容によっては、許可表示から期待される保健の用途を超える過大な効果についても、国が許可しているかのような誤認を与えるおそれがある。
そのうえで、誇大表示に該当するおそれがある例を3つ挙げています。原文の例をそのまま引きます。
- 「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」から「食後」を省いて「血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」と書くと、食事によらない中性脂肪に適しているものと誤認させる
- 「本品は、コレステロールの吸収をおだやかにする働きがある○○を含んでいるので、コレステロールが気になる方に適した食品です」を、単に「コレステロールの吸収をおだやかにする」と書くと、その食品自体がその用途に適しているものと誤認させる
- 「本品は、○○の働きにより、体脂肪を減らすのを助けるので、体脂肪が気になる方に適しています」を、単に「体脂肪を減らす」と書くと、その食品自体が体脂肪を減らすものと誤認させる
3例とも、足した言葉ではなく落とした言葉が問題にされています。
根拠になる条文
この類型で効いてくる条文は3つです。
- 健康増進法第65条(誇大表示の禁止)— 主語は「何人も」なので、広告を出す事業者だけでなく媒体側も対象になり得ます
- 健康増進法第43条第1項 — 許可表示の内容を改変することはこちらに触れます
- 景品表示法第5条第1号(優良誤認)
「自主基準に反する」という話ではなく、法令の話です。
機能性表示食品側は自主基準が同じ方向を向いている
機能性表示食品の適正広告自主基準は、2026年6月1日に第4版が公表されました(令和8年5月28日制定、業界4団体)。その6.(2)2)ⅰ) が、届出表示の切り出しについて4つの類型を挙げています。
- 医薬品的と誤認される切り出し
- 補完用語を省いた切り出し — サポート、助ける、役立つ、「〇〇感」
- 対象者・条件の限定を落とした切り出し — 「食後の」「血圧が高めの方の」「運動とともに」
- 届出された機能性の範囲を逸脱する強調(作用機序だけを切り出すものを含む)
補完用語は飾りではありません。医薬品的だと誤認されるのを避けるために付いています。だから省いた時点で意味が変わります。
なお、自主基準は業界4団体の自主ルールであって法令そのものではありません。 ただ、事後チェックで参照される物差しとしては実質的に機能しています。逆に質疑応答集のほうは特定保健用食品についての通知なので、許可表示の枠組みをそのまま届出表示に置き換えられるわけでもありません。それでも、切り出しをどう見るかという一点については、両者が同じ方向を向いています。
全文を書いていても逃げ切れない
届出表示の全文を載せていても、前半だけ大きく、太字で、色を変えて置けば、切り出しと同じに扱われます。文字として書いてあるかどうかではなく、読み手に何が届くかで見られています。
だから検索では見つからない
この類型は、広告の文字列を検索しても引っかかりません。「体脂肪を減らす」は、適法な許可表示の中にそのまま入っている文字列だからです。NGワードのリストで機械的に照合すると、正しく全文を書いている広告だけが引っかかるという逆向きの事故が起きます。
探すのはNGワードではなく、落ちている限定語のほうです。
チェックの手順
届出番号または許可番号から全文を引いて、広告の文言と1語ずつ突き合わせます。見るのは5点です。
- 補完用語を落としていないか — 「疲労感を軽減」を「疲労を軽減」、「血圧を下げることを助ける」を「血圧を下げる」と書けば逸脱です
- 対象者・条件の限定を落としていないか — 「食後の」「血圧が高めの方の」「BMIが高めの方の」「運動とともに」の省略は、いずれも別の保健の用途に誤認させます
- 機能の限定語を外して上位概念へ広げていないか — 「認知機能の一部である記憶力を維持」を「認知機能維持!」とするのは逸脱です
- 作用機序にあたる部分だけを切り出していないか — 「体重の減少をサポートすることで高めのBMIの改善に役立つ」のうち「体重の減少」だけを出すのは不可です
- 全文を書いていても、前半だけを強調していないか — 文字の大きさ・太さ・色が前半に寄っていないかを見ます
最後の1点はテキストだけでは判定できません。実画面かスクリーンショットを取り寄せる必要があります。
この記事の一次資料
一次資料 消費者庁「特定保健用食品に関する質疑応答集」別添(平成28年1月8日 消食表第5号/一部改正 令和6年12月10日 消食表第1080号)※問52は本文36ページ中 一次資料 消費者庁「特定保健用食品に関する質疑応答集の一部改正について」(令和6年12月10日 消食表第1080号) 一次資料 消費者庁「特定保健用食品の表示許可等の申請を検討している事業者の方へ」(通知一覧)この記事を書いた人
Pharma-Ad Lab|医療広告・薬機法コンサルタント まさ(薬剤師)
薬剤師/薬機法管理者/景表法 第1級/YMAA・KTAA認証/コスメ薬機法管理者
健康食品・化粧品・クリニックの広告を、薬機法・景品表示法・医療広告ガイドラインの観点で審査しています。NGを指摘して終わりにせず、訴求力を保ったままの言い換えまでセットで出すのが基本方針です。