バナーとリスティングでは、
ホームページに書けることが書けません

遷移先のランディングページに治療内容・費用・期間・リスクを一式そろえても、バナー側は違反になります。限定解除の4要件のうち①が、この2つの媒体では構造的に成立しないからです。制作の工程で原稿を分けておかないと、公開したあとで作り直しになります。

先に結論を書きます。限定解除は「ページをどう作るか」の話ではなく、「どの媒体に出すか」の話です。バナー広告とリスティング広告は、どれだけ丁寧に書いても要件①を満たせません。だからこの2つに置けるのは広告可能事項の範囲だけです。ただし、バナー自体が禁止されているわけではありません。

ウェブサイト本体

書ける

4要件を満たせば、自由診療の術式名でも症例写真でも広告できます。

バナー・リスティング

書けない

同じ文言でも、広告可能事項の範囲を超えていれば違反です。遷移先で限定解除が成立していても関係ありません。

30.5%
違反のうち最多の類型
「広告可能事項以外の広告」1,595件
88%
審査2,092サイト中、
違反があった1,842サイト
6.5倍
通報を待たない能動監視の
4年間の増加(63件→413件)
1.76時間
AI導入後の1サイトあたり
審査時間(従来3.95時間)

出典:厚生労働省「第7回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」資料2(令和8年3月26日)/令和7年度 医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業。88%の母集団は「通報または能動監視によって審査対象になったサイト」です。クリニック全体の割合ではありません。

Section 01

行政の指摘で最も多いのは「広告可能事項以外の広告」

厚生労働省のネットパトロールは、令和7年度に2,092サイトを審査し、5,225件の違反を挙げています。その内訳で最も多いのが「広告可能事項以外の広告」で1,595件、全体の30.5%です。虚偽や誇大より、比較優良より多い。つまり、いちばん多く指摘されているのは「嘘を書いたこと」ではなく、「書いてよい範囲を超えたこと」です。

そして令和7年度から、行政の側の監視にAIが入りました。医療広告ガイドラインと事例解説書を学習させた判定ツールで違反URLの抽出から個票案の作成まで自動化し、1サイトあたりの作業時間が3.95時間から1.76時間に下がっています。通報を待たずに行政の側から探す能動監視は、令和4年度の63件から令和7年度の413件へ、4年で6.5倍になりました。

見る側が速くなったので、「今まで指摘されていないから大丈夫」という根拠は弱くなっています。しかも令和7年度の資料には、どの分野を狙って見に行くかまで書かれています。美容152件、歯科35件、がん20件。その他の内訳にはオンライン診療、不妊治療、GLP-1などのダイエットが並びます。

探しに行った先の内訳は、こうなっています。

媒体能動監視の件数(令和7年度)
ウェブサイト264件
YouTube67件
Instagram34件
X24件
TikTok24件

指摘の中身も媒体によって偏っていて、ウェブサイトとYouTubeは「広告可能事項以外」が最多、InstagramとTikTokはビフォーアフターが最多です(TikTokは55%)。媒体ごとに違反の出方が違うという事実は、これから書く話の裏づけにもなっています。

Section 02

限定解除の4要件と、①が成立しない理由

医療広告では、法律と告示で定められた事項以外を広告できません。ただし患者が自ら探して読む情報であれば、適切な情報提供が円滑に行われる必要があるという考え方から、一定の要件を満たすことで制限が外れます。これが広告可能事項の限定解除です。自由診療の術式名や費用をクリニックのサイトに書けているのは、この仕組みがあるからです。

限定解除の4要件(医療法施行規則第1条の9の2)

① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

③と④は、自由診療について情報を提供する場合に限ります。4つすべてを満たして初めて成立し、1つでも欠ければ広告可能事項の範囲に戻ります。

実務では②③④の話しか出てきません。問い合わせ先を入れる、費用の総額と内訳を書く、リスクと副作用を書く。このあたりは制作の現場でも定着していると思います。①は「当たり前に満たしているもの」として扱われてきました。

ところがガイドラインは、①を満たさない媒体を名指しで挙げています。

医療広告等ガイドライン 第3-3 の 2 なお、インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたものなどは、①を満たさないものであること。

理由は単純です。①は「患者等が自ら求めて入手する情報」であることを要求しています。クリニックのサイトは、患者が検索して自分で訪れます。一方でバナーやリスティングは、患者が求めていない場面で、こちらの側から表示させるものです。だから①の構造そのものに合いません。原稿をどう書き直しても満たせないという意味で、これは「構造的に」不成立です。

そして令和8年3月30日に出た事例解説書(第6版)は、冒頭の脚注でこのことを明記しました。

医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)「はじめに」脚注 本事例解説書では、上記限定解除要件の4要件のうち、一般的なウェブサイト(リスティング広告、バナー広告を除く)等であれば、原則として①の要件を満たすことから、広告が①の要件を満たすことを前提として、②から④を対象とする事例解説を行っています。

解説書に並んでいる事例は、ほぼすべてバナーとリスティングを除外した前提で書かれています。事例集を見ながら作った原稿が、バナーに移した瞬間に前提から外れる。ここが見落とされやすいところです。

Section 03

厚生労働省が示した2つの事例

第6版は、バナー広告とリスティング広告について独立した事例を立てました。どちらも図が付いていて、遷移先のホームページ側は正しく作られている状態で描かれています。そこが重要です。

違反事例 事例解説書 第6版 (36)

費用とリスクをバナーの中に書き込んでも、違反でした

バナー広告における違反 / 厚生労働省医政局総務課 事務連絡(令和8年3月30日)

情報サイトの記事面に、クリニックのバナーが2本置かれている図です。1本目は脱毛治療で「1部位 2,000円」「1,000円 新規入会キャンペーン」「治療実績県内1位」。これは比較優良広告と費用の強調として、バナーかどうかに関係なく不適切です。

問題は2本目です。脂肪吸引のバナーで、部位ごとの費用(脚部 1回・日帰り 250,000円/下腹部 550,000円)と、リスク(皮下出血や腫れ、しびれが起こることがあります)がバナーの中に書き込まれています。③と④を満たそうとした跡がはっきり見えます。そして図に描かれた遷移先のホームページには、治療内容・費用・期間と回数・リスクと副作用の4項目がそろっています。

それでも解説はこう書いています。

事例解説書 (36) の解説 特定医療機関ホームページを訪れるものとは異なり、患者等が自ら求めて入手する情報でなく、限定解除要件①を満たさない状態で広告可能事項以外が広告されている

出典:事務連絡 令和8年3月30日 厚生労働省医政局総務課「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)について」別紙 (36) p.55

違反事例 事例解説書 第6版 (37)

説明文に誇張をいっさい使わなくても、違反でした

リスティング広告における違反 / 同 別紙 (37) p.56

「脱毛治療」で検索した結果の画面に、広告が3本並んでいる図です。1本目は「【業界最安値】脱毛治療が1部位2,000円」で、比較優良広告にあたります。ここは分かりやすい。

2本目を見てください。説明文には誇張表現がひとつも入っていません。医療用脱毛レーザーを使い、毛根部のメラニン色素に熱を吸収させることで毛を成長させる組織にダメージを与える、という仕組みの説明。2か月おきに4〜5回で終了するという期間と回数。20万円程度という料金。照射中は痛みがあり、照射後も赤みが出ることがあるというリスク。限定解除の③と④で求められる項目が、説明文の中にきちんと入っています。遷移先のホームページにも4項目がそろっています。

それでも、同じ理由で違反とされました。患者等が自ら求めて入手する情報ではないので、①を満たさない状態で広告可能事項以外が広告されている。

「もっと丁寧に書く」という方向では直りません

③と④は、情報が足りないことを問う要件です。足りなければ書き足せば満たせます。ところが①は、情報の量や正確さの問題ではありません。誰が求めてその情報に行き着いたか、という媒体の性質の問題です。

だから説明文を増やしても、費用の内訳を細かくしても、リスクを丁寧に書いても、バナーとリスティングでは①が満たされません。直し方は「書き足す」ではなく「広告可能事項の範囲まで引く」しかありません。

出典:事務連絡 令和8年3月30日 厚生労働省医政局総務課「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)について」別紙 (37) p.56

Section 04

では、バナーとリスティングに何が書けるのか

解説書は、バナーとリスティングの両方について同じ一文を添えています。「なお、バナー広告自体が一律禁止されているわけではなく、広告可能事項の範囲内であれば広告可能である」。ここから先が実務です。

広告可能事項は、医療法第6条の5第3項に第1号から第16号まで定められています。制作で実際に使うのは、このあたりです。

バナー・リスティングに置けるもの注意点
政令に定められた診療科名「審美歯科」「インプラント科」「専門外来」は診療科名として掲げられません。歯科では「矯正歯科」「小児歯科」「歯科口腔外科」は可
病院・診療所の名称、電話番号、所在地、管理者の氏名略称・記号は社会一般で通用する範囲で可
診療日・診療時間、予約による診療の実施の有無
医師・歯科医師である旨/医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴外国の医師免許をもって「医師である旨」は書けません
保険診療として実施している検査・手術その他の治療の方法診療報酬点数表の範囲。治癒する旨など効果を推測的に述べることは不可
平均的な入院日数、平均的な外来・入院患者数などの結果に関する事項厚生労働大臣が定めるものに限ります
入院設備の有無、病床の種別ごとの数、従業者の員数

自由診療でも、広告可能事項に入るものがあります

ここが実務でいちばん見落とされています。自由診療だから限定解除が必要、という理解は正確ではありません。自由診療の治療方法のうち、次の2つに当たるものは広告告示で広告可能事項に入っており、限定解除なしで書けます。つまりバナーにも置けます。

① 保険診療、または評価療養・患者申出療養・選定療養と同一の手技であるもの

美容等の目的で公的医療保険が適用されないけれど、手技そのものは保険診療と同じもの。ガイドラインが挙げる具体例は「顔のしみ取り」「イボ、ホクロの除去」「歯列矯正」です。

② 承認または認証を得た医薬品・医療機器を、その承認等の範囲で使うもの

具体例は「内服の医薬品によるED治療」「眼科用レーザ角膜手術装置の使用による近視手術の実施」です。

ただし、両方とも条件が付きます

広告可能になるのは、次の2つを併記する場合に限られます。

(a)公的医療保険が適用されない旨。「全額自己負担」「保険証は使えません」「自由診療」といった表現です。
(b)標準的な費用。「5万〜5万5千円」のような幅や「約○円程度」でも差し支えありませんが、窓口で実際に負担する標準的な費用が容易に分かるように示す必要があります。麻酔管理料や指導料が別にかかる場合は、それらを含めた総額の目安まで。併用されることが通常想定される他の治療があれば、それも含めた総額の目安を書きます。

なお、医薬品・医療機器の販売名(型式番号等を含む)は、薬機法の広告規制の趣旨から書きません。医師が個人輸入で入手したものを使う場合は、同じ成分や性能の医薬品等が承認されていても広告できません。

逆に言えば、保険診療に同じ手技がなく、承認・認証を得た医薬品や機器も使わない自由診療の術式は、広告可能事項に入りません。限定解除が要る。だからバナーには置けない、ということになります。事例に出てきた脂肪吸引は、保険診療に同じ手技がないのでこの側です。なお医療脱毛は、使用するレーザー機器が承認または認証を得たものかどうかで②に入るか分かれます。機器の承認の有無を先に確認してください。

媒体を問わず書けないもの

ここから先は、限定解除が成立していても解除されません。サイト本体でも書けないので、バナーなら当然に書けません。

体験談

治療等の内容または効果に関する、患者本人の体験や家族からの伝聞にもとづく主観的な体験談。ガイドラインは「患者等の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、広告は認められない」と明記しています。

ビフォーアフター写真

治療内容・費用・主なリスク・副作用の詳細な説明を付した場合は該当しないとされていますが、その説明をリンク先のページに置くことも、長所と比べて極端に小さな文字で載せることも認められていません。さらに治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、限定解除が成立しない場面では術前術後の写真そのものが広告できません。バナーでは実質的に使えません。第6版は、バナー画像に説明のないビフォーアフターを置いた事例を独立して挙げています。

費用を強調した広告(品位を損ねる内容)

ガイドラインの具体例がそのまま載っています。「今なら○円でキャンペーン実施中!」「ただいまキャンペーンを実施中」「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」「○○100,000円 50,000円」(値下げ前の価格と並べる形)「○○治療し放題プラン」。費用を書くこと自体は問題ありません。値引き幅や期間限定であることを訴求の中心に置く見せ方が禁じられています。

比較優良広告

「業界最安値」「治療実績県内1位」のような、他院より優れていると誤認させる表示。事例の1本目がこれでした。

「厚生労働省認定」

診療報酬の加算は、要件に合致していることを届け出るものです。国が個別に審査して認定を与えているわけではないので、「厚生労働省認定」「国が認めた歯科医院」は誇大広告になります。「○○加算の届出を行っています」と、届出である旨をそのまま書きます。加算の名称を出すこと自体は問題ありません。

医療の内容と直接関係ない事項による誘引

「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」のように、提供される医療の内容と直接関係のない情報を強調して誘引するもの。

Section 05

実際に出ている広告を2本、分解します

ここまでの整理を、検索結果のスポンサー枠に実際に表示されていた広告に当てはめます。医院名とドメインは出しません。見たいのは誰が違反しているかではなく、1本の短い広告文にいくつ論点が乗るかです。

実例 A インプラント(自由診療)

短い広告文に、独立した論点が5つ

リスティング広告(匿名化) 見出し 〇〇でインプラント.月3000円 | 国際〇〇インプラント学会…
説明文 大学病院レベルの環境でインプラント治療を実施。国際〇〇インプラント学会認定医が担当。〇〇区〇〇駅5分のインプラント専門歯医者。相談、診断、CT撮影無料。
該当箇所どう読むか
「月3000円」インプラント体は承認を受けた医療機器なので、治療方法そのものは第5号に入り得ます。ただし条件は「公的医療保険が適用されない旨」と「標準的な費用」の併記です。自由診療である旨がなく、月額の分割払いだけで窓口負担の総額が分かりません。別にかかる管理料・指導料を含めた総額の目安まで書く必要があります
「大学病院レベルの環境」比較優良広告。何と比べているのかが示されていません
「国際〇〇インプラント学会認定医」インプラントは、日本歯科専門医機構が認定する基本的な診療領域8つ(口腔外科・歯周病・歯科麻酔・小児歯科・歯科放射線・補綴歯科・矯正歯科・歯科保存)にも、旧告示で届出のあった歯科5団体5資格にも入りません。広告可能な専門性資格名ではないということになります。ガイドラインは、認定した団体を明記せず単に「○○専門医」と書くことも誤解を与えるとして誇大広告に当たるとしています
「インプラント専門歯医者」診療科名として広告できない名称です。「審美歯科」「専門外来」も同じ扱いになります
「相談、診断、CT撮影無料」費用を強調した広告(品位を損ねる内容)

この1本に、独立した論点が5つ乗っています。そしてリスクの記載はどこにもありません。ただし、リスクを書き足せば直るという話ではないのは、ここまで見てきたとおりです。

実例 B マウスピース矯正(自由診療)

問題は術式名ではなく、費用の書き方でした

リスティング広告(匿名化) 見出し 〇〇で3,600円/月〜の安い矯正 | 〇〇で3,600円/月〜の安い矯正
説明文 出っ歯・口ゴボ・八重歯・受け口・ガタガタはお任せ。経験豊富な名医による目立たない歯列矯正。他院で断られた方もご相談下さい。
該当箇所どう読むか
「3,600円/月〜」「歯列矯正」はガイドラインが第4号の具体例として明記しているので、自由診療である旨と標準的な費用を併記すれば広告可能事項に入ります。問題は術式名ではなく、月額だけで総額・期間・回数が分からないこと、そして自由診療である旨がないことです
「安い矯正」(見出しの左右に2回)費用を強調した広告
「経験豊富な名医」比較優良広告。優秀性について著しく誤認させる表現は、事実であっても認められません
「他院で断られた方も」他の医療機関との比較
症状名の列挙(出っ歯・口ゴボ・八重歯・受け口・ガタガタ)治療の対象であり、広告可能事項の外です

装置の承認の有無を先に確認してください。マウスピース型の矯正装置には、国内で承認を受けていないものがあります。未承認の装置を使うなら第5号に当たらないので、サイト本体であっても限定解除に5つの追加要件が乗ります。①未承認である旨 ②医師等の個人輸入によるならその旨と厚生労働省の注意喚起ページの情報提供 ③同一の成分・性能をもつ国内承認品の有無 ④主要な欧米各国での承認状況と重大な副作用 ⑤医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度の対象にならない旨。最後の1つは、実務でいちばん抜けます。

なお、見出しの左右に同じ文言が入っているのは規制とは別の設計ミスです。チェックの手前で気づける品質の問題として、あえて残しました。

Section 06

生成AIは、この区別を持っていません

この2本が生成AIで作られたと断定はできません。ただ、文章生成AIに「インプラントのリスティング広告を書いて」と指示すると、ほぼ同じ構造のものが出てきます。理由は3つあると思っています。

  1. 媒体を区別しません。サイト用のコピーと広告文を作り分けるという概念を持っていません。同じ訴求を、置き場所にかかわらず返します。
  2. 訴求を最大化するよう学習しています。「安い」「名医」「他院で断られた方も」は、広告文としてはむしろ優秀な表現です。書かせれば出てきます。
  3. 限定解除を、原稿の生成に反映できません。条文を聞けば答えられます。ただし「制度を満たすように原稿を分ける」という工程は、指示しない限り実行されません。

作る側がAIを使うほど、この形の広告が増えます

そして行政も同じ時期にAIを入れました。冒頭に挙げたとおり、1サイトあたりの審査時間は半分以下になっています。

作る速度と、見つける速度が、同時に上がったということです。

Section 07

制作の工程をどこで分けるか

ここまでが法令の話です。制作の側の実務に落とすと、問題は1つに集約されます。サイト本文の原稿を、そのままバナーとリスティングに流用できないということです。

工程としていちばん危ないのは、ランディングページのファーストビューをそのままバナーの版に起こす作業です。LPのファーストビューは、限定解除が成立している前提で、術式名・費用・症例写真・訴求コピーを載せてあります。強いところを切り出してバナーにするのが自然な流れですし、デザインとしても正しい。ただし媒体が変わった瞬間に、切り出した要素のほとんどが広告可能事項の外に出ます。

リスティングも同じです。見出しと説明文に入れられるのは、広告可能事項の範囲だけです。説明文の文字数が足りないから情報を削る、という発想で調整すると、削る方向が逆になります。丁寧に書くほど違反の量が増える構造だからです。

判定の順番

  1. 誘引性と特定性が両方あるか。受診を誘引する意図があり、かつ医師名または医療機関名が特定できる。両方そろえば医療広告規制の対象です。バナーも、媒体を問わず対象になります。
  2. 媒体は何か。バナー広告/リスティング広告/検索結果のスポンサー枠/費用を払って意図的に上位表示させたもの。いずれかなら、限定解除は使えません。ここで先に分岐させます。
  3. 書いてある内容が広告可能事項の範囲に収まっているか。自由診療を出すなら、保険診療と同一手技か、承認・認証を得た医薬品・機器を使うものか。そのうえで「保険適用されない旨」と「標準的な費用」を併記しているか。
  4. 禁止広告に当たらないか。虚偽・比較優良・誇大・体験談・ビフォーアフター・品位を損ねる内容。これは媒体にかかわらず全部に当たります。

②を③より先に置くのが要点です。内容から見ていくと、限定解除の③④を満たしているかどうかの確認に入ってしまい、そもそも限定解除が使えない媒体だという分岐を通らずに進んでしまいます。

媒体審査で落ちたときに

Google広告・Yahoo!広告の審査も、医療広告ガイドラインを前提に見ています。落ちた理由を「医療だから審査が厳しい」で止めると、入稿を作り直しても同じところで落ちます。差し戻されたクリエイティブに術式名・症例写真・費用の強調・No.1訴求のどれかが入っていないかを先に見てください。

誰が責任を負うか

医療広告規制の名宛人は医療機関です。行政からの通知も、措置命令も、医療機関に向きます。ただし差し戻しと作り直しの工数を負うのは制作側です。そして納品した物が違反だったという事実は、次の発注の判断材料になります。

AIで広告文を作るなら

媒体を明示したうえで生成し、生成後に人が照合するという順番を工程に固定してください。「リスティング用」と伝えずに書かせると、サイト本文と同じ訴求が返ってきます。

止める位置

公開前のチェックでは遅いと思います。その段階で指摘しても、デザインが出来上がっているので直せるのはコピーだけです。構成の段階で、サイト本文用とバナー・リスティング用の原稿を分けて起こしておく。それだけで、この論点は工程から消えます。

Section 08

SNSと動画は、また別の類型

第6版は第2章をSNSと動画にあてて、11の事例(39〜49)を置いています。こちらはバナーとは別の考え方になります。SNSや動画は、患者が自ら探して見ることもあるので、①そのものは満たしうる。代わりに「どこに置くか」の要件が加わりました。

第6版 第2章が示した線内容
1投稿=1広告SNS上の1つの投稿は、単独で1つの広告として取り扱われます
別リンクに逃がせない「詳細は当院ホームページでご確認ください」として自院サイトでしか確認できない場合は、限定解除が成立しません。プロフィール・投稿・返信の一連の広告の中で説明します
複数SNSへの分散は不可同一SNS内で完結させます。分けるなら「詳細は1投稿目をご覧ください(投稿を固定しています)」のように掲載場所を明示して、近傍に置きます
チェックの範囲投稿本文だけでなく、プロフィール欄・返信・ハッシュタグ・(動画は)タイトル・概要欄・テロップ・音声まで。いずれか1つに禁止事項が含まれれば違反です
個人アカウントも対象院長個人のアカウントでも、医療機関や医師が特定でき受診への誘引があれば広告規制の対象です
引用の形でも体験談他者の投稿を引用して自院のサービスの体験談を紹介する形も違反です。動画内の映像・音声で患者がリスクや副作用を述べている場合も体験談として扱われます

出典:事務連絡 令和8年3月30日 厚生労働省医政局総務課「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)について」別紙 第2章 (39)〜(49) p.58〜73

つまり、同じ文言を扱える範囲が媒体ごとに3通りに分かれました。ウェブサイト本体は4要件を満たせば書ける。バナーとリスティングは広告可能事項まで。SNSと動画は書けるけれど置き場所が縛られる。媒体をまたいで原稿を使い回す前提の運用が、この改正でいちばん痛みます。

Sources

この記事の一次資料

本文の記述はすべて次の資料にもとづいています。引用は原文のまま載せました。リンク先はいずれも厚生労働省が公開しているものです。

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