「満足度93%」という数字は、化粧品でも、クリニックでも、同じ見た目で置かれています。
ただ、それを見ている条文は業種ごとに違います。そして重さも違います。
化粧品では、そもそも原則として行わないこと
日本化粧品工業会の「化粧品等の適正広告ガイドライン」は、2026年7月24日に改訂α版が公表されました。2020年版から6年ぶりの改訂です。そのE22は、こう書いています。
「満足度93%!!」、「愛用者の98%が満足」のように、調査結果に基づき数値で示すことは、効能効果又は安全性が確実であるかのような誤解を与えるおそれがあるので、原則として行わないこと。
注記が足りないという話ではありません。満足度を数値で出すこと自体を、原則として禁じています。
そのうえで例外が置かれています。効能効果や安全性への誤認を与えない「使用方法、使用感、香りの嗜好性等」に関するものであって、客観的調査に基づき、調査の概要を明示し、調査の結果が適正に引用されている場合は認められる、という形です。
つまり化粧品では、満足度の数字は原則の側ではなく例外の側にあります。「出せるかどうか」ではなく「例外の要件を全部満たしているか」で考える順序になります。
医療機関では、誇大ではなく虚偽の側に入る
医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)の第3-1の1(1)は、内容が虚偽にわたる広告の具体例を並べています。「絶対安全な手術です!」「加工・修正した術前術後の写真等の掲載」と同じ列に、満足度が入っています。
「○%の満足度」(根拠・調査方法の提示がないもの)
データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示すものについては、虚偽広告として取り扱うべきであること。
調査をしていれば足りる、ということにもなっていません。
また、非常に限られた患者等を対象に実施された調査や謝金を支払うことにより意図的に誘導された調査の結果など、公正なデータといえないものについても、虚偽にわたるものとして取り扱う。
ここが化粧品と分かれるところです。医療広告の世界では、誇大広告と虚偽広告が別の箱になっていて、満足度は虚偽の箱に入っています。
そして虚偽広告は直接罰の対象です。同ガイドラインは罰則についてこう書いています。
罰則については、①の虚偽広告、法第6条の6第4項に違反する場合(麻酔科の診療科名を広告する際に、併せて許可を受けた医師の氏名を併せて広告しなかった場合)又は④の中止命令若しくは是正命令に従わなかった場合には、6月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金(法第 87 条第1号)
ただし、いきなり告発される運用ではありません。同じ箇所は、虚偽広告を行った者が中止や是正の行政指導に応じない場合に、司法警察員へ書面で告発することを考慮すべきである、という順序で書いています。条文の構造としては直接罰、運用としては指導が先。この2つを混ぜないほうがいいです。
それでも、景品表示法の優良誤認が措置命令から課徴金へ進む建て付けであるのに対して、医療法の虚偽広告は最初から刑事罰の射程に置かれています。同じ「満足度97%」でも、クリニックのサイトに置いた瞬間に重さが変わります。
※印は救済にならない
「満足度93%」に※を付けて、下のほうに小さく「使いやすさについて」と書く。よく見る作りです。
粧工連のガイドラインは、この方式を名指しで否定しています。
「満足度93%!!」等の表現に※を付し、離れた場所や小さな文字で「使いやすさ」等と記載するのは、効能効果又は安全性に対する満足度と消費者が誤認するおそれがある。
そのうえで「使いやすさの満足度93%!!」のように、限定語を表現本体へ入れることを求めています。※の先へ逃がすのではなく、見出しの中に入れる。
同じガイドラインには、より一般的な形でもこう書かれています。
※印等により説明文を付記する場合は、説明文がない状態で判断して認められる範囲であることが前提であり
説明文によって、認められない表現を救済するものであってはならない、と続きます。
注記は、表現の可否を変える装置ではありません。表現そのものが認められる範囲に収まっていることが前提で、注記はその内側で補足をするだけのものです。景品表示法の打消し表示でも同じ結論が出ていますが、今回は薬機法と業界基準の側から同じ線が引かれました。
読み手の側がこの※をどう見ているかも、行政が調べています。消費者庁の実態調査で1,000人に聞いたところ、最も多かった回答がこれでした。

企業が不都合なことを隠すため、小さい文字を使っていると感じることがある
これを選んだ人が51.6%です。一方、打消し表示をあまり意識していないと考えられる回答者は32.0%にとどまります。つまり残りの7割弱は注記を読んでいて、そのうえで「隠すために小さくしている」と受け取っているということになります。
※を付けると誠実に見える、というのは書き手の側の感覚です。読み手の側では逆に働いていました。
行政は「その数字は嘘だ」と証明しない
もう一つ、数字を出すときに効いてくるのが景品表示法7条2項です。
消費者庁から表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められたとき、期限は15日です。出せなかった場合、あるいは出した資料では表示を裏付けていないと判断された場合、その時点で不当表示とみなされます。
行政の側が「その満足度は嘘だ」と立証する仕組みではありません。「嘘は書いていない」ではなく「いま手元に資料があるか」で決まります。 広告を作った時点では調査票があったが、担当者が変わって所在が分からない、という状態は、資料が無いのと同じ扱いになります。
出すなら何を揃えるか
3つの資料を突き合わせると、満足度を書くために必要なものは共通しています。
- 調査の対象者(誰に聞いたか。自社の既存顧客だけ、という母集団も問題になります)
- 調査の時期
- 回答者数
- 実際の設問文(「効果に満足しましたか」と聞いたのか「使いやすさに満足しましたか」と聞いたのか)
- 調査の実施記録(謝金の有無を含む)
- そして、限定語を注記ではなく表現本体に入れた文言
これが揃わないなら、数字を落とすほうが早いです。満足度は、出すために揃えるものの量に対して、集客への寄与が最も小さい数字の一つだと考えています。
検索しても見つからない類型
最後に、制作や運用の側にとって実務的な話をします。
この類型は、広告文の機械チェックでは出てきません。「満足度」という語そのものは適法にも使われるからです。NGワードのリストに「満足度」を入れれば、正しく書いている広告まで全部拾ってしまいます。
拾えるかどうかは、その数字の裏にある調査票を見たかどうかで決まります。人が見るしかない箇所として持っています。
この記事の一次資料
一次資料 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正 一次資料 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン 改訂α版」2026年7月24日公表 一次資料 消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」 一次資料 消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針(不実証広告規制に関する指針)」 一次資料 消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書」(平成29年7月14日公表/平成30年9月21日 一部訂正)この記事を書いた人
Pharma-Ad Lab|医療広告・薬機法コンサルタント まさ(薬剤師)
薬剤師/薬機法管理者/景表法 第1級/YMAA・KTAA認証/コスメ薬機法管理者
健康食品・化粧品・クリニックの広告を、薬機法・景品表示法・医療広告ガイドラインの観点で審査しています。NGを指摘して終わりにせず、訴求力を保ったままの言い換えまでセットで出すのが基本方針です。