定期便に入れる冊子は、すでに買った人が読むものです。だから広告ではない——と考えると、最初の一歩で外れます。顧客を誘引する意図があり、商品名が明らかで、一般の人が読める。この3つが揃えば広告です(平成10年 医薬監第148号)。同梱物も、医薬品等適正広告基準の対象になります。
そして医薬品には、健康食品にはない制約があります。体験談が原則として使えない。「私も使っています」「感謝しています」だけでも認められません(適正広告基準 第4の3(5))。ところが同梱冊子の構成案には、ほぼ必ず「お客様の声」のページが入っています。
第3類医薬品の定期便同梱冊子(B5・全8ページ)を、その制約のまま組みました。声のページは削っていません。何を載せて、何を載せないかを組み替えています。
表紙のキャッチは、承認された効能・効果の文言をそのまま使っています。「腰痛に効く」と言い換えた瞬間に承認の範囲から出るので、いちばん強い訴求といちばん安全な文言がここでは一致します。裏表紙の定期コース案内は、「いつでも解約OK」ではなく「次回お届け予定日の10日前まで」と日数で書く(特定商取引法 第12条の6)。
原因の説明は、シニア向け冊子でいちばん煽りに転びやすい場所です。「放っておくと歩けなくなる」は適正広告基準 第4の11(不安・恐怖を与える表現)に当たります。ここでは筋肉→神経→エネルギー代謝の3段で説明し、末尾に受診をすすめる一文を自分から置きました。成分の説明も、承認された効能の外へは出していません。
この冊子でいちばん大きな文字は、効能ではなく用法・用量です。内服薬は用法用量を明瞭に表現すること、多めに飲ませる方向の表現や過度なまとめ買い訴求を置かないことが、適正広告基準 第4の4で求められています。強調の当て先を効能から用法へ移すのが、この見開きの設計です。
ここが本題です。上がよく支給される原稿、下が実際に組んだページ。どちらも同じ「先輩ユーザーの声&安心Q&A」という構成枠のなかにあります。
消費者庁の実態調査では、体験談4本に「※個人の感想です。効果には個人差があります」を添えた広告で、1,000人中90.3%が注記を見落としました。関心の高い層に絞っても86.7%です。注記は読まれていない。
だから注記を大きくするのではなく、効き目の声そのものを置かないほうへ寄せました。そのうえで「載せていない」ことを本文の大きさで書いています。隠して小さくするのと、正面から書くのとでは、同じ制約でも読後感が逆になります。
| 支給原稿によくある形 | 組み替えた形 | 効いている規制 |
|---|---|---|
| 10年悩んだ腰痛が、飲み始めて2週間でラクに | 小粒で、のどに引っかからない(使用中の感覚に限定) | 適正広告基準 4-3(5)/体験談は使用後の変化を語った時点で不可 |
| 薬剤師の私も愛用しています | 掲載しない。薬剤師は「答える側」に置く(Q&Aの回答者) | 適正広告基準 4-10(医薬関係者等の推せん)。事実でも不可 |
| 天然由来なので副作用はありません/安全性は確認済み | まれに発疹・発赤・かゆみ等があらわれることがありますと書き、中止・相談へ | 薬機法66条2項/4-3(5)が例示する保証表現そのもの |
| 多くの方が1週間以内に実感/即効性があります | 1ヵ月ほど服用しても症状がよくならない場合は中止して相談 | 適正広告基準 4-3(7)(効能効果の発現程度) |
| 満足度98%/腰痛薬 売上No.1 | 掲載しない | 景表法5条1号。No.1表示は調査の適切性4条件を満たさなければ不当表示 |
| 3箱まとめ買いで30%OFF/痛い日は多めに飲んでも安心 | 用法用量を最大の要素に。2回分をまとめて飲まないと明記 | 適正広告基準 4-4(過量消費・乱用助長) |
判定は自作の薬機法・景表法ルールDB(842項目)と、医薬品等適正広告基準の原文で照合しています。表の各行には対応する rule_id を持たせた設計シートがあり、納品時に添付します。
同じ「お客様の声」でも、商品の区分によって線が動きます。ここを取り違えると、健康食品で通っていた原稿がそのまま医薬品で違反になります。
| 区分 | 効能を書く | 体験談 | ビフォーアフター |
|---|---|---|---|
| いわゆる健康食品(届出なし) | ✕ | 使用感まで可 | ✕ |
| 医薬品(この冊子) | ○ 承認文言そのまま | 原則不可 | ✕ |
| 医薬部外品 | ○ 承認文言そのまま | 原則不可 | ✕ |
| 医療広告(クリニック) | 限定解除の4要件を満たせば | 限定解除でも不可 | 限定解除の範囲で |
健康食品の記事LPで効能を一度も書かずに組んだ例、医薬部外品で承認効能を正面から掲げた例は 記事LPのページ にあります。
本ページの冊子は制作見本です。ブランド名・社名・連絡先・数値はすべて架空で、特定の商品や実在の企業を示すものではありません。効能・効果および用法・用量は、ビタミンB1B6B12主薬製剤の承認基準に沿った一般的な記載です。実案件では添付文書の記載をそのまま使用します。